ビレッジプレス
1985-2021

 
 
 

発行書籍

半沢英一「邪馬台国の数学と歴史学―九章算術の語法で書かれていた倭人伝行路記事」

 
ISBN978-4-89492-168-9 C0021
定価1,680円+税
 
倭人伝の文面を無視し独り歩きしている「邪馬台国」という言葉。
それを怪しまず助長する学界とジャーナリズム。
この状況を許したのは、倭人伝は所詮つじつまが合わない文献だという共通認識だった。
しかしほんとうに倭人伝はつじつまの合わないものなのか。
同時代の中国数理科学文献を典拠とし、倭人伝行路記事の隠された高度の合理性を露わにし、
千七百年の謎に挑んだ意欲作。


<目次>

第1部 なぜ倭人伝行路記事では異常な里単位が使われているのか?
第1章 倭人伝行路記事
 1 魏志倭人伝概要
 2 倭人伝行路記事
 3 行路記事概要
 4 短里問題
 5 行路記事のオリジナルな原文とは何だったのか?

第2章 中国古代数理科学の中の短里
 6 『周髀算経』の蓋天説と一寸千里説
 7 一寸千里説に隠れていた短里
 8 中国古代数学者・劉徽と行路記事との関係
 9 『九章算術』劉徽序文の一寸千里説
 10 劉徽の海島算経
 11 海峡距離はどのように測られたのか?

第3章 三国志状況と短里の可能性
 12 魏の受命改制
 13 明帝詔勅の蓋天説
 14 渾天説に圧倒されていた蓋天説
 15 魏の存在理由としての復古主義
 16 三国志状況がもたらした短里

第2部 倭人伝行路記事はほんとうに辻褄の合わないものなのか?
第4章 古田武彦氏の傍線読法
 17 倭人伝行路記事はいかに読まれるべきか?
 18 傍線読法その一(韓国内陸行)
 19 傍線読法その二(島内里程半周計算)
 20 傍線読法その三(「至」先行動詞有無による主線・傍線書き分け)
 21 傍線読法その四(不弥国・邪馬台国間距離ゼロ)
 22 傍線読法その五(「水行十日陸行一月」全日程)
 23 傍線読法では部分里程の総和が全里程となる

第5章 傍線読法の検討
 24 その一(韓国内陸行)の検討
 25 その二(島内里程半周計算)の検討
 26 その三(「至」先行動詞有無による主線・傍線書き分け)の検討
 27 その四(不弥国・邪馬台国間距離ゼロ)の検討
 28 その五(「水行十日陸行一月」全日程)の検討

第6章 傍線読法の典拠としての中国古代数学
 29 『周髀算経』における先行動詞が無い「至」
 30 『九章算術』における先行動詞が無い「至」
 31 『九章算術』における先行動詞が有る「至」
 32 中国古代数学におけるゼロ「無入」
 33 中国古代数学の語法で書かれていた倭人伝行路記事

第3部 邪馬台国はどこにあったのか?
第7章 邪馬台国博多湾岸説批判
 34 博多湾岸説の論理
 35 行路記事と合わない博多湾岸説
 36 考古学とも合わない博多湾岸説

第8章 筑後川からの水行と甘木にあった邪馬台国
 37 「末盧国」松浦郡、「伊都国」糸島郡という通説を疑う
 38 筑後川から可能だった水行
 39 甘木にあった邪馬台国
 40 実際に魏使がたどった道

第9章 邪馬台国甘木説の検討
 41 神話と歴史を混同してはならない(安本美典説批判)
 42 人口論との整合性
 43 傍国比定との整合性
 44 甘木邪馬台国の考古学的痕跡

第4部 邪馬台国はその後どうなったのか?
第10章 末期的弱体王権だった邪馬台国
 45 邪馬台国が謎だったもう一つの理由
 46 倭人伝政治記事
 47 倭人伝そのものが語る邪馬台国の脆弱性
 48 狗奴国とはいったい何ものだったのか?

第11章 日本列島に急展開した前方後円墳
 49 前方後円墳概要
 50 特殊器台から考える前方後円墳の起源
 51 年号鏡から考える前方後円墳出現の実年代
 52 日本列島に急展開した前方後円墳
 53 前方後円墳王権の祭祀的統合性
 54 中国王朝の権威が必要ではなかった前方後円墳王権

第12章 邪馬台国大和説批判
 55 邪馬台国は日本最強の勢力という思い込み
 56 大和説の根拠としての『日本書紀』
 57 日本の王は天皇だけという思い込み
 58 大和説の根拠としての三角縁神獣鏡
 59 下賜鏡ではありえない三角縁神獣鏡
 60 卑弥呼の墓になじまない箸中山古墳
 61 倭人伝そのものが否定する邪馬台国大和説
 62 前史がなかった大和

第13章 前方後円墳王権に併呑された邪馬台国
 63 文献から消えた邪馬台国
 64 前方後円墳創出に寄与せず、やがて前方後円墳圏に入った九州
 65 前方後円墳王権に併呑された邪馬台国
 66 再び、狗奴国とはいったい何ものだったのか?
 67 本書全体のまとめ